主張
ヘルスユニットと保健計画態勢の確立を望む
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.546-547
発行日 1969年10月15日
Published Date 1969/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203956
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都市化,産業高度化,人口老齢化,傷病像の質的変化,および医療の技術革新,病院医療の高度化などを背景として,第2次大戦後の世界各国に共通する保健の切実な課題は,社会的合理的な地域をユニットとした,予防,治療,リハビリテーションの一貫した水準と効率の高い地域保健活動の実現である.またこのような努力は,高邁な理念を実践に移したというよりは,前述のようなドラスティックな社会的変動によって,医療に対するニーズとサプライの関係が危機的な状況に立ち至ったことが,その主要な契機となっていることも否定できない.このような条件は,日本についても同様であり,とくに昭和30年代以降の急速な経済成長に伴う人口老齢化,傷病像の変化と時を同じくして皆医療保険が実現し,医療の需要が社会化されたため,実はこの課題は今日の日本にとってとりわけ切実なものといえる.ところが不幸なことに日本の現状をみると,総合的な地域保健活動の推進に必要な基本的条件に欠陥が多く,とくに医療制度,医学教育などについて前近代的な条件が温存されているため,類のない経済成長の半面で,国民の保健が危機的な問題性をはらんでいるといえる.医学教育のあり方が根源的に問われ,医療保険財政が危機に瀕し,健保抜本改正,国民医療対策が重大な政治問題となっているのは,このような社会的背景を有するものであることが正しく認識される必要があろう.
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