特集 老人の生活と健康
都市老人の保健対策
大和田 国夫
1,2
1大阪市大・衛生学
2公衆衛生学
pp.341-347
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203732
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はじめに
近年わが国における死亡率の改善は,若年層に大きく,老年層に小さいが,その結果,平均余命は延長し,65歳までの生存数(百分率で示す)は,たとえば,昭和10-11年,男子36.2%,女子43.6%であったのに対し,昭和40-41年では,それぞれ69.6%,80.5%に達し,特に女子の延び割合は著しい1)。したがって,人口の年齢構成は高い年齢層の占める割合が増加し,その移行は昭和30年頃より著明となってきた。このような傾向とともに,さらに出生数の減少は,人口の急速な老齢化を招き,それは欧米の先進国にやがて匹敵するようになるであろう。わが国における65歳以上の老年人口は,昭和40年に約618万を算定したが,現在の状態がつづけば,昭和55年には1,000万を越えるものと推定される1)。
他方,公衆衛生・医療の発達によって,疾病構造は変化し,細菌感染や,妊産婦,乳児期の疾患による死亡は著明に減少し,成人病による死亡が年々増加している。この事実は老人の慢性・退行性疾患の増加を意味し,老弱の状態で生きながらえる老人に対する養護を必要とするものが,今後ますます増加するものと予測される。
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