特集 都市化のなかの保健活動
都市と保健問題
田中 恒男
1
1東大・保健学科
pp.275-280
発行日 1968年8月15日
Published Date 1968/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203716
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話の前に,"都市と保健問題"というタイトルの中で,皆さん方が公衆衛生行政という立場にたって,ご活躍なさっているという立場を考えますと,一体この公衆衛生行政の対象が,コミュニティーであるのか,それとも個々の,具体的にいえば,病人とか健康に悩みをもっている人間というインディビジュアルなのかを,明確にさせておく必要があるように思います。従来の公衆衛生活動,あるいは公衆衛生行政では,この定義がきわめてあいまいなまま過ごされてきたように思います。このこと自体,実は公衆衛生活動を明確に特徴ずけするために重要な論議であり,これだけでもいくらことばを費してもなお足りないことでもありましょう。
今まで,公衆衛生という活動が,集団の健康を論ずる学問分野であり,活動であるとされながら,従来行なわれていた公衆衛生の大部分は,結局のところメディケア・システムに関するサイドワーク的な役割が中心であったのではないか,という感じがします。それを前提として今日の問題を論ずる場合と否とでは,大部方向が変わってきますが,一応私は今日より少し広い次元で考えるという立場にたって,話を進めてみたいと思います。
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