患者と私
修業時代の思い出
武藤 完雄
1
1福島医科大学
pp.530-531
発行日 1966年4月20日
Published Date 1966/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203950
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木誌編集室から「患者と私」と云う題で随筆をかく様にと依頼を受けた.何を書こうかと思つたが,幸に同時に見本が送られて来た,僚友桂名誉教授の執筆である,早速読んでみた.冒頭に教授生活が長くなつて来ると忙がしくなつて,患者と親しく接することが,少なくなってくると反省されている.ここに患者と私の随筆のヒントを得た様に感じた.
「患者と私」の患者を単数にすれば,手術が特にうまく行つた場合や,反対に手術がうまく行かず苦しんだいくつかの思い出が頭に浮ぶ.これらは教授就任後の事例で,患者さんが知名の士であつたために,社会的事情が加わり,色々苦労したなどである.これに反し患者を複数と考えた場合の思い出は修業時代,助手時代の古い記憶が多い.桂教授が教授生活が長くなるにつれ,忙しくなつて患者とゆつくり話も出来なかつたと云う反省と一脈相通ずるものがあるのであるこれは私が桂教授と共に長い間同じ地方に,同じ時期に勤めていたためとも思うが,あるいはわたくしの時代の教授と云うものに共通の傾向であったかもしれない.
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