特集 今後の結核問題
主題
疫学的にみた結核症の展望
岡田 博
1
1名古屋大学医学部予防医学教室
pp.297-310
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203253
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はじめに
結核症は永いあいだ人類を苦しめてきた。わが国にあっては10余年前までは死因の第1にあったことはよく知られている。しかし,近年は急激に減少して死因の7位に低減し,国民の生命が延長し,脳卒中,がん,心臓病などが台頭してくるとともに,ともすれば結核症は過去の病気として,国民の間に軽視されがちになってきている。しかし今なお治療を要する患者が200万も存在し,毎年2万余も死亡していて,あらゆる感染症のうちでなおもっとも主要な地位を占めていることには変わりはない。また,欧米諸国に比較してもなお数倍の死亡率を示していて,とうてい過去の疾患として結核対策をゆるがせにすべき時期ではないことは明らかである。また後記するように,世界的にみても後進国の多くにあっては現在なお主要な疾患なのである。
そこで本論文においては,結核症の過去から現在に至る推移を疫学的観点から瞥見するとともに,現今における結核症の問題点を考察し,今後の予防対策についての見解を記したいと思う。
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