今月の主題 結核
トピックス
結核ワクチン研究の現状と展望
松本 壮吉
1
,
小林 和夫
2
Soukichi MATSUMOTO
1
,
Kazuo KOBAYASHI
2
1大阪市立大学大学院医学研究科細菌学分野
2国立感染症研究所免疫部
キーワード:
結核
,
細菌感染症
,
ワクチン
Keyword:
結核
,
細菌感染症
,
ワクチン
pp.1149-1153
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101727
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1.結核(症)の現状
世界の年間死亡総数の約1/4を占める感染症において,結核は感染症の死因で後天性免疫不全症候群(AIDS)に次ぐ第二位で,全感染症による死亡者数の約1/7を占める.世界保健機関の統計(2008年5月23日現在)によると2005年の結核患者発生数は881.1万人,死亡者数が157.7万人である.AIDS患者における結核死亡を考慮した場合,毎年約200万人が結核によって死亡している.このように現在でも結核は甚大な健康被害を招来している.
結核には菌の感染後即発症する一次結核と,潜伏期を経て発症する二次結核がある(図1).わが国を含め,結核の低―中蔓延地域における成人肺結核の多くは二次結核である.結核菌は現在人類の1/3(20億人)に潜伏感染しており,既感染者の5~10%が終生の間に二次結核を発症する.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は内因性再燃を加速し,HIV-結核菌重複感染者の約10%が毎年結核を発症する.したがって,結核ワクチン開発においては,感染暴露前(pre-exposure vaccine)のみならず,感染暴露後(治療的)ワクチン(post-exposure vaccine)の開発が希求される.
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