特集 公衆衛生50年の回顧と展望
結核行政の回顧と展望
山口 正義
1
Masayoshi YAMAGUCHI
1
1結核予防会
pp.24-26
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207179
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今から50年前,昭和10年前後のわが国の結核は,いわゆる国民病として広く国民の間に蔓延し,結核による死亡は人口10万に対して200以上を数え,常に国民主要死因の第1位を占め,15歳から29歳までの青少年の死因の半数は結核であるというように,誠に由々しい状態であった.
当時の結核行政は,結核菌に汚染した家屋,物件の消毒,結核患者の隔離,旅館,理髪店の従業員等結核を伝染させる恐れのある職業に従事する者,いわゆる業態者に対する健康診断,また特に必要と認める地方公共団体に結核療養所の設置を命ずる等の事項を盛りこんで大正8年に制定された結核予防法を基とし,更に,昭和9年に保健衛生調査会から内務大臣に答申された結核予防の根本対策,即ち,結核病床の増加,結核予防相談所の普及,結核回復者のための特別保護施設の設置,幼少年者のための結核発病防止の施設の設置,結核に関する知識の普及等を骨子とする諸施策が実施されていたが,昭和10年以降,結核死亡者数は増加の一途をたどり,昭和14年には人口10万に対し216となった.
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