特集 地区診断を診断する
主題
地区診断への評価と反省—その妥当性・有効性を考える
柏熊 岬二
1
1大正大学文学部社会学教室
pp.241-246
発行日 1966年5月15日
Published Date 1966/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203236
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はじめに
地区診断という言葉が使われ始めてから,かれこれ7〜8年になる。公衆衛生の分野から始まって,社会福祉関係に波及し,さらに社会教育,犯罪・非行対策などにも取り入れられ,現在では地域社会を対象とするあらゆる分野でそれが応用されているようである。
ただし地区診断をどのように理解し,いかなる形で地域対策,あるいは地区活動の中に組み入れるかについては,人によって若干の違いがある。公衆衛生に限ってみても,私などの考え方と山本幹夫氏のそれとは内容的な差異がある1)。われわれが地区診断を狭義に理解しようとするのに対し,山本氏は広く解釈されようとする。すなわち私たちはコミュニティそのものの診断ではなく,そこに顕在もしくは潜在する問題の診断に限定し,作業の中心を条件分析においているのであるが,山本氏はコミュニティそのものの診断,つまり地域社会の把握から出発し,問題発見,対策,評価に至るプロセスすべてを包括するものと考え,特に問題の発見に重点をおこうとする。また地区診断の理論構成(特に条件分析の論理)についても,私の考えに対して小林治一郎氏から批判が寄せられている。主に唯物弁証法の導入の可否に関する問題であるが,この点は本誌に再三にわたって掲載されているのでここではふれない2)。
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