特集 綜合保健と公衆衛生看護活動
ニュース資料
新潟の「水俣病」
渡辺 厳一
1
1新潟大学衛生学教室
pp.524-525
発行日 1965年9月15日
Published Date 1965/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203114
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□流行の状態
新潟市には,2つの大きな河が流れている。それぞれは,直ちに日本海へそそいでいるが,第1の川はいうまでもなく信濃川である。他は,群馬県尾瀬沼,福島県猪苗代湖に水源をもち,現在「水俣病」で脚光を浴びている阿賀野川である。この原稿を執筆している今日までに,有機水銀中毒と確実に診断されたものは13人,うち5人は死亡した。これらの患者は,河口から5粁以内の両岸の住民,しかも特定の魚を多量に食した成年男子に限られている。患者の分布は教室の吉田が作製した第1図のとおりである。発病は,昨年8月から今年4月頃までで,その後の発生は今のところみあたらない。問題の性質上,当初診断をくだすことは必ずしも容易でなかった。新潟大学脳研究所と県衛生部が中心となり,問題地域内における軽症患者の発見に努めている。しらみつぶしの家庭訪問により,120人をscreeningし,逐次精密検診を行っている。今後,多少の増加はあるかもしれないが,一応流行は終熄しつつあるように思われる。
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