原著
1960年都道府県別人口の再生産率
水島 治夫
1
,
重松 峻夫
2
1九州大学
2鳥取大学公衆衛生学
pp.577-581
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202914
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まえがき
1960年の全日本の人口再生産率について,「再生産率の赤字問題」として,本誌27巻,12号(1963)に私見を述べた。その要旨は,1957年以降,日本の純再生産率Net reproduction rate(NRR)が1.0以下(赤字)となり,1960年には0.925(出生の届遅れを補正せず)である。ところが動態統計では年間約90万の自然増加があったのであるから,一見矛盾するようである。しかし,それは以前の高い出生が,現在の人口の年齢構成に遺産の形で貯えられており(生殖年令層が多い),赤字がカバーされているためであって1960年の年齢別の出生率と死亡率が不変のまま永続すれば2005年ころまでは遺産がつづき,人口は自然増加を示すが,そのころになると遺産は尽き,赤字が表面化し,その後は9代240年の半減期をもって減少する。これは今日のところ,全世界中ほとんど日本だけの事態であり,再生産率が回復しなければ,ついには民族自殺問題に直面せねばならぬこととなる。さし当り,まず優生保護法の一部を改正し,人工中絶を抑制すべきであるというにあった。この所見に対し多方面から反響があったのは,筆者の意を強うするところであるが,法改正はたやすく行われにくいもののようである。
しかし日本人口の現在のpotentialが広く正しく認識され,その対策が速かに講ぜられることを期待するものである。
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