特集 清掃事業の現状と将来
放射線防御剤—開発現状と問題点
砂田 毅
1
1大阪府立放射線中央研究所衛生工学課
pp.267-275
発行日 1964年5月15日
Published Date 1964/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202825
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はじめに
有害な電離放射線の影響を受けないようにするには,必要のない限り近つかぬこと(疎開と退避)であり,止むを得ず近づかねばならぬときは遮蔽の手段を構ずる必要があることは言うまでもない。しかしながら,このような防御手段や態勢がとれないケースが空間的にも時間的にも有り得る(例えば核戦争,原子炉事故,原爆実験による重降下物,誤照射等)。このような場合に一概に仕方がないとあきらめて,その対策を構じておかずにしまうことは,人間の自己防衛本能からして我慢出来ないし,また例えば核戦争を想定してみた場合,自分が死亡または重篤な放射線病を起すことは他人に迷惑をかけ,災害時の活動をそれだけ阻害することになろう。まさか死人をその儘放置もできず,病人に何等の手当看護も加えないでおく訳にもゆかぬからである。また多数の人間が放射線傷害を受ければ,それだけ全体としての復興活動に支障を来すことになる。従って「貴方は生き残る必要がある」1)訳である。放射線傷害を受けた患者の治療は,Cronkite2)の犬を被曝モデルとした一連の治療実験に於て観られたように,多くの人手と充分な看護と厳重な監視を必要とする。ユーゴの原子炉事故による患者の治療経験3)4)からして放射線傷害の治療の前途が非常に明るいものと,過重評価する傾向が一部にあるが,現在のレベルでは果してその当時採用された治療法が実際に有効であったかどうかに疑問を投じている者もある2)5)6)。
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