特集 社会医学(第3回社会医学研究会講演)
一般演題
乳児死亡をめぐつての社会医学的考察
丸山 博
1
,
南 吉一
1
1大阪大学医学部衛生学教室
pp.615-617
発行日 1962年11月15日
Published Date 1962/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202588
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戦後日本の乳児死亡率の低下をもって国民の健康水準向上の証拠だとする主張や,保健技術進歩の結果もはや乳児死亡は国民健康のバロメーターとして役立たなくなったとする意見などがあるが,まさしく乳児死亡は社会医学の課題たりえなくなったのであろうか。本稿ではこの点に考察の焦点を合わせた。
乳児死亡を客観的に標識する際いつも統計数値が用いられるのだが,その統計の基盤はあまり問題にされていない。われわれは,乳児死亡の評価をある特定の単一指標に求めることは科学的にみて無理であるばかりか危険であり,それは出生前後に関するいくつかの指標の関連の下に行わなければならないことを終始一貫指摘してきた。その最大の理由は,現行社会制度下において,人間の出生,死産,死亡といったデリケートな事象が正確に統計的に把握されうるとは考えられないこと,および関連諸事情の変化にあってはそれらの事象自体すらが自在に操作されうる現実があることのためである。
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