Japanese
English
展望
精神障害と社会階層
Mental Disorder and Social Stratum
大原 健士郎
1
,
安田 三郎
2
Kenshiro Ohara
1
,
Saburo Yasuda
2
1慈恵会医科大学精神神経科教室
2東京教育大学社会学研究室
1Dept., of Neurol. & Psychiat., Jikei Univ., School of Med.
2Dept., of Sociol., Tokyo Univ. of Education
pp.676-690
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201376
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Ⅰ.はしがき
精神医学の領域に,本来からすれば社会学的な用語である社会階層ということばを導入するとき,いくつかの問題が提起される。まず,社会学的にみて社会階層とはなんであるか,果たして明確な区分が可能であるかどうかということである。この問題をとりあげる前に,社会階層はまつたく地域社会的な意義を持もつのであり,しかもたえず変動していることを考慮しておかねばならない。したがつて,学者のこのことばにくだす定義も各人各様であり,しかも外国における区分がそのまま日本で使用可能であるというほど単純なものでもない。当然のことながら,わが国においてはわが国独自の社会階層を設定することが要求されてくる。その意味から,この小論は社会学者と精神科医の共同執筆という異例の形をとることになつた。つぎに重要な課題は,社会階層は精神医学において問題たりうるかどうかということである。すなわち,社会階層は精神障害の病因として考えてよいかどうかという問題がある。つまり,低社会階層が原因となつてある種の精神障害の発呈をもたらしているのだろうか。あるいはまた逆に,精神障害の結果,社会不適応状態となり,精神障害者は二次的に低社会階層におちこんでゆくものであろうか。われわれの臨床経験によれば,各種疾患の有病率・治療効果・予後などが,それそれ社会階層によつていちじるしく差異を示すことが実証されている。しかし,これらの成績だけから,それが原因であるか,結果であるかを断定することは困難である。
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