特集 ウイルス感染症の疫学
腸管系ウイルス感染症
甲野 礼作
1
1京大ウイルス研究所
pp.257-264
発行日 1962年5月15日
Published Date 1962/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202521
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1.腸管系ウイルス感染症について
腸管系ウイルス(Enterovirus)にはポリオウイルス1,2,3型(以下P1,P2,P3),エコーウイルス1〜28型(E1〜E28),コクサッキーウイルスA群1〜24型(CA1〜CA24),同B群ウイルス1〜6型(CB1〜CB6)が知られている。ただしこのうちE10はレオウイルスに転属したため,存在しないことになった。またE9はCA23とされたが,その取り扱いはまだ一定していない。
これらのウイルスはいずれもRNA型で,細胞質で増殖し,エーテルおよび胆汁酸塩に耐性を示し,小型球型で大きさはほぼ30mμ前後である。しかも人の腸管をすみかとし,主として屎便中に排泄され,時に病原性を発揮するが,その症候は似通った点の多いこと,また季節的出現状態も同一であることなどの共通点をもっている。動物界においても腸管をすみかとするウイルスはいくつかあって,マウスのポリオウイルスといわれるTheiler virusやこれに類縁のもの,サルの腸管から分離されたエコーに類するECMO(Enteric cytopathogenic monkey orphan virus)ウイルスとか,ウシからのECBOなどがある。
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