原著
若年者高血圧の疫学的研究(特に高血圧管理の立場から)—第Ⅰ報 若年高血圧者の精密検診成績/第Ⅱ報 若年者の血圧と両親の循環器所見との関係
多紀 英樹
1
1千葉大学医学部・公衆衛生学教室
pp.684-703
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202473
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Ⅰ.緒言
従来若年者の高血圧は主として症候性のものであり,高年者における本態性高血圧に匹敵する若年者高血圧は比較的稀なものであると考えられていた。これは本症が原因で臨床家を訪れるものが少数であつたからである。しかるに近年わが国において中枢神経系の血管損傷が国民死因の主位をしめ,高血圧に対する予防医学的な関心が高まり,一般社会人を対象とする血圧調査が広範に行なわれるにおよんで,若年者にみられる血圧亢進について注意が向けられるようになつてきた。その理由は,若年者高血圧の出現率が従来考えられていたよりもはるかに高率であることが次第に明らかになつたこと,およびそれが高年者の本態性高血圧の成因になんらかの関与があるのではないかと考えられたからで,このことが高血圧管理を何歳ぐらいから始めるべきであるかという問題を提起したからである。
新井および著者1)らは高血圧・血管硬化の集団検診を行ない,40歳代においてすでに高血圧者の34.6%,正常血圧者の12.1%において眼底に細動脈硬化性の変化がみられることを指摘し,高血圧の管理を20歳代,30歳代の早期に実施する必要があることを示唆した。中沢2)はまだ環境の影響を十分に受けていない青少年においても高血圧多発地域においては若年者高血圧出現率が高いことを指摘し,佐々木3)らも脳卒中死亡率の高い東北地方の学童の血圧が全国平均に比べて有意の差をもつて高いことを報告している。
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