原著
結核患者家族に対する化学予防について
渡辺 正男
1
,
佐藤 健象
1
,
武田 信子
2
,
明珍 ユリ
2
,
富田 みつ
2
1福島医大衛生学教室
2福島保健所
pp.575-579
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202449
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結核治療の進歩ならびに予防対策の強化により亡国病とまでいわれた結核の死亡も最近ではわが国民死亡原因の第6位まで転落するなど著しい減少をみたのである。しかしながら昭和34年度の結核実態調査によると患者の新発生は依然として多く,結核の蔓延状況を年齢的にみると若年層の結核が減り中年層の結核が増えた。つまり初感染発病が減り,既感染発病が増えている。またいわゆる感染性の患者は低所得階層に多く,経済的社会的理由から受療率も低く,濃厚感染源となつて放置される傾向を示すと警告されている。結核実態調査によると感染源の半数以上は家族内感染であることから患者に対する受療促進のみならず,特に家族を含む検診の励行とツ反およびBCG接種の普及などによる予防措置が重要であるが,なお積極的予防対策として特に在宅患者の家族に対し化学療法剤によるいわゆる化学予防を行なうならば発病防止対策としてより強力な方法と考えられる。
抗結核剤による化学予防については多くの報告1)〜9)があるが,いずれも価値あることを述べている。北本7)によると臨床的にはBCG接種および化学予防の効果を比較するに発病率をそれぞれ1/2および1/3に減少せしめるが,動物実験ではツ反陽転直後の予防内服は効果がないという。なおまた耐性菌による感染という問題もあるわけであるが,投与対象および方法の宣しきを得れば効果を挙げ得る点では一般に認められているところである。
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