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ある結核家族を見て
高橋 靜子
1
1芝保健所
pp.60-62
発行日 1951年10月10日
Published Date 1951/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200165
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どんよりと曇つたうすら寒い三月のある日待合室にも廊下にも所せましとあふれる程になつていた百名近い受診者の數も大分少くなつた晝近く,豫診室に残つたチヤートも數枚となつてほつとしながら豫診を取つている時,
「○○さん」と呼ばれてはいつて來たのは9歳位を頭に3人の子をつれた35,6歳の男の人であつた。よれよれのズボン,生氣のない顔,一目でもそれと察しられる通り妻が結核で家庭で療養中なのである。保健婦の訪問で家族檢診をすゝめられ父子そろつて檢診に來所したのであつた。三人の子は笑顔を見せるでもなく,はにかむでもなく父をとりまいておでこで物を見るようにおどおどとあたりを見廻している。私の向い側に立つている同僚の保健婦が豫診をとり陽轉している未の5歳になる女の子が直接撮影他の2人の男の子は,ツベルクリン檢査父親は赤沈とX腺の間接撮影をする事になつた。
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