綜説
農村衛生の問題点
宮本 璋
1
1東京医科歯科大学農村厚生医学研究施設
pp.433-440
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202427
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農村の諸問題が現在大きな曲り角に来ているということは,新聞紙上等でしばしば指摘されているところであるので今さら事新しくいう必要もないのであるけれども,ことに最近農業基本法が制定されるというような事態になり,農村はここで全く新しく脱皮しなければならない情勢になつて来た。もち論かかる脱皮が日本経済全体の新しい転換期における一つの部分現象と考えれば,これは単に農村だけの問題でないことはいうまでもないのであるが,かかる転換期において農村衛生に心を寄せている者に新しい問題が種々起つて来ているのもまた当然で,私達はここでこれらの立場から改めてこの新しい情勢に対する種々の問題を考えて見たい。
もち論,農村衛生の諸問題の中には新事態になろうとなるまいと一貫して不変の問題も幾つかある。例えば,如何にすれば農村における文化の指導を今日のような騒々しさや軽薄さから離れてもつと高度な近代性を持たせることが出来るか,ことに農村の生活態度を更に一層科学的にする事が出来るかというような問題は,農村衛生の最も根本的なまた最も重要な問題として,事態が曲り角に来ようと否とにかかわらず.むしろ日々新らたな問題として考慮されねばならない。
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