綜説
生活構造の歪みと慢性病—日本人の生活を中心に
佐藤 徳郎
1
1国立公衆衛生院
pp.249-256
発行日 1961年5月15日
Published Date 1961/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202400
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アフリカとアメリカの黒人では胃癌,肝癌,肺癌の分布が全く異なつている。これは全く生活様式の相違に基くもので,癌の成因を解く鍵がこの中にひそんでいる。われわれはもつと風俗習慣を正確に知り,生体に及ぼす影響を分析しなければならぬ(グラスゴー癌病院Dr.Peacock)。このような現象は癌だけでなく種々慢性病についても考えなければならぬことと思われる。
慢性病が自覚され,受診するようになつてからでは治療しても,作業能力の回復の面からはそれほど期待できない。そこに至るまでの中途の過程の異常即ち臓器の慢性疲労の状態を知り得るとすれば(自覚症が少なく,現在では疾病とは認められぬ場合が多い),その後の病状の発展を抑えることが可能となる。特にその原因が明らかにされたものでは,容易であると考えられる。
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