論説
日本人食生活の改善
大礒 敏雄
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201121
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我が國は,南北に長く,山地も多いので,氣候上の變化に富んで居るため,四季を通じて,色々な食物が得られる關係上,新鮮な食物を,そのままの味で樂しむ習慣がついているので,食物を味あう點では非常に敏感に訓練されたものといえよう。このことが色々な調理法の發達を促して,味覺,視覺の上で,世界にもまれな料理を築き上げたことは一般によく知られているところである。
然し,このことは,必然的に,趣味,嗜好のみに偏る結果,食物の内容たる榮養には,至極無關心となつて來たのである。そして,食物の種類の多いということと,生産量の多いということとを取違えて,やれ瑞穗の國だとか,食物には惠れた國だとか自負して居たのである。あれ程,食物に富んで居た,戰前でさえ,食物の内地での自給率は,やつと,85%であつたに過ぎないのであつた。
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