特集 低所得階層と結核
貧困に連なる社会的問題点
村山 午朔
1,2
1前神奈川県立長浜療養所
2日本医療社会事業協会
pp.221-225
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202396
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1.まえがき
人間が単なる生物学的存在であるに止らず,その属する社会的環境に常に何等かの影響を受けている,いわば「社会的人間」の立場を以つてすれば,疾病,傷害その他の不健康をもたらす要因の社会的影響を度外視することはできない。特に慢性疾患については,その経過予後に社会経済的影響が極めて大である。貧困と疾病との悪循環については今更これを表示するまでもなく生活保護動態調査(35年3月分)によれば傷病を理由とする保護開始は60.4%であり,傷病治癒による廃止は30.9%である(35年社会福祉統計)。また世帯種別に有病率をみると第1表に示すように低所得者階層に極めて高率である。
なおこれを収入別にみても20,000〜24,999円階層の千世帯対傷病世帯数97.2,千人対傷病人員数中結核5.3その他21.1に対し2,000〜3,999円階層は千世帯対傷病世帯数168.3,千人対傷病人員数結核19.1その他88.0を示し低所得者階層はその有病率は極めて高い(昭和33年厚生行政基礎調査)。また,生活保護の件数の23.9%は医療扶助であり,保護費の57.3%が医療扶助費に使われている(34年社会福祉の動向)。しかも医療扶助の大半は結核と精神病なのである。
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