特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告Ⅰ
追加報告
1.長野県一山村における人口移動の実態
金子 勇
1
,
内田 昭夫
1
1千葉大学医学部農山村医研
pp.634-635
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203141
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変貌しつつある農山村の中にあって,対象地区長野県下伊那郡南町和合も例外ではない。当地は駅から20km,総面積60km2の中,山林が86%を占め,標高500〜1,000mの間に13の集落が散在して成立っている。ほぼ70%が農家で,専業はその3%にすぎない。農家一戸平均耕地は5反強,山林は16町であるが,多くは零細規模である(耕地3反以下24%,5反以下46.5%,山林1町以下13%,10町以下55%)。生産の第1位は林産物で,64年には総生産額の44%,次いでこんにゃく,米,養蚕などとなっている。近年における傾向として,経営面積70a以下の農家数の減少,二毛作田,桑園の減少とともに,肥料,農薬の購入,耕耘機などの設備の増加が認められる。また木炭生産は,木炭の値下りと原木代の上昇のため著しい打撃をうけ,60年の35,000俵,1225万円から65年には20,000俵,700万円に落ちている。山林にも著しい変化が現われている。山林総面積5,000町歩強のうち,63年には公有林12%,地区民所有68%,不在地主所有19%強となっており,次第に不在地主の占める割合が多くなってきている(現在では実質的に約25%以上が不在地主所有といわれている)。また針葉樹は総面積の19%にすぎず,そのうち樹齢30年以上は22%に達しない。しかもその所有は富農に集中し貧農は資金不足から山林における再生産は不可能になってきている。
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