文献
遺伝と健康と放射線と
芦沢
pp.224
発行日 1960年4月15日
Published Date 1960/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202267
- 有料閲覧
- 文献概要
人類はいくつかの遺伝が主役を演ずる先天性の欠陥をもつていると思われている。この遺伝負荷の1/4からすべては,それぞれの世代で自然界におこる突然変異の生起率によつて維持されていると信じられる。電離放射線のレベルが上るにつれて突然変異を起すような条件の頻度は増加するであろう。診療X線の照射に由来する曝射のレベルは現在のところ1人当り約3rと考えられるが,このことは遺伝性負荷を10%ほど増大させている。核兵器の実験にもとづく放射性降下塵の遺伝的影響は多分この1/13位のものである。放射性降下塵の影響をうける人口百分率からいえばわずかだが25億の世界人口からすれば,被害者の絶対数はばかにならない。人類の遺伝と陶汰についての知識はごく限られたものにすぎないので,放射線の遺伝におよぼす影響については,大胆な仮定を設けざるを得ない。従来は人類の遺伝の研究方法は面接による,何らかの遺伝質をもつた者の家系調査が専らであつたが,現在行なわれている人口動態統計を家族関係,健康状態の記録を付して整理保管し,遺伝研究の資料に役立てようという試みがカナダで行なわれている。個人のカードから家族関係をぬき出してゆく操作や難点および経費などをしらべるため予備調査が行なわれたことがのべられている。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.