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産院におけるタイプ80のブドウ球菌に因る流行/官庁勤務者における疾病による労働不能の頻度
西川
pp.470,484
発行日 1959年8月15日
Published Date 1959/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202170
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わが国の出生率は戦後のbabyboomを過ぎると急激に減少の一途をたどつたが,少なく産んで大きく育てようという国民一般の風潮を反映して,産院・病院・診療所等の施設内で分娩するものが増えている。全出生を100.0とすると,昭和22年には2.4%が施設内分娩であつたが,10年後の昭和31年には22.7%と約10倍に増加している。出産そのものについては施設内分娩を奨励するが,もし新生児疾患の流行が起れば,自宅におけるよりも施設の方が大事に至ることが多いはずである。ここに紹介するのはグラスゴーの王立産院におけるブドウ球菌による流行例である。
元来,産院においてブドウ球菌による流行が起つた例は相当報告されている。しかし,この報告は,1955年にオーストラリアで第1例があり,英・米では1957年にはじめて発見されたフアージタイプ80のブドウ球菌に因る流行で,流行発生前5ヵ月間もフアージによる型分類を続けていて,流行が突然ぼつ発したもので,流行のまん延状況を退院後の母子にまで手を延ばして調べ上げ,そして病院の一時閉鎖によつて流行を一挙に終そくせしめたという点で特筆すべきものである。タイプ80のブドウ球菌による流行は1957年11月19日に1人の新生児の下顎部膿瘍から分離されたが,その後の8週間に14例が感染し,その中9例は重症におちいり,その5例が死亡した。罹患率は8%であつたが致命率は35.7%ということになる。
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