特集 保健所管理
公衆衛生に望まれる社会学的アプローチ
柏熊 岬二
1
1大正大学
pp.26-29
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202069
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1.新しい科学の方向
最近の諸科学の方向の中で,際立つていることの一つは,他の学問分野との提携であり,共同研究の機運の盛上りである。たしかに,従来の狭い学問的枠の中にとどまつていたのでは十分に解明しえない問題が次第に多くなつてきている。とくに,対象を一にする科学の間では新しい方向への努力が余計に望まれようし,事実,これまでも2〜3の分野では行われてきた。例えば,パーソナリテイ(Personality)の解明を目指す,心理学,精神医学,社会心理学,社会学,人類学,その他の科学の間では,比較的早くから共同研究の功績をあげており,最近では,各学問分野の境界を取除いて新しい学問体系--行動科学(behavioral science)--を生みだそうとする動きさえ芽生えている。
本稿の主題である公衆衛生についても,その対象を共通にする他の分野との交流を必要としよう。とくに,人間の社会生活の諸側面を取扱つている社会諸科学,中でも社会学との提携は不可欠の条件とさえ云える。このことは,残念ながら従来余り省みられなかつた点であるが,今後両者がますます接近するにつれて,必ずや双方に実り多き成果をもたらしてくれるであろう。
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