特集 自殺予防
公衆衛生と自殺―予防のアプローチ
本橋 豊
1
1秋田大学医学部社会環境医学講座健康増進医学分野
pp.659-663
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100940
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自殺予防対策が公衆衛生政策上の重要課題になっている.現代社会がストレス社会となったことの反映であるが,わが国におけるバブル崩壊後の長期にわたる経済的不況が,中高年のメンタルヘルスに影響を及ぼしていることを指摘する声は多い.わが国では,自殺死亡は都市部よりは人口過疎の農村部に高いことが知られている1).東北地方は特に自殺高率県が多く,都道府県別順位でつねに上位を占めており,特に秋田県は1995年から連続して全国第1位という不名誉な記録を更新している2).このような状況にあって,効果的な自殺予防対策を公衆衛生学的立場から推進していく必要性はきわめて高い.
これまでの自殺予防対策としては,精神医学専門家によるうつ病のスクリーニングと早期介入という医学的モデルが重視され,市町村での保健活動の成功事例が報告されてきた3).新潟県松之山町の先駆的事例は特に有名であり,最近では青森県名川町での介入事例も報告されている.地方自治体レベルでの自殺予防の包括的取り組みは,平成12年度から始まった秋田県の事例が参考になる.
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