特集 かびと健康障害
かびと生活—公衆衛生実務者に望む
倉田 浩
1
Hiroshi KURATA
1
1国立衛生試験所衛生微生物部
pp.452-455
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206110
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■はじめに
医学の分野で病原微生物というと誰しもまずは細菌を,次にウイルスを想起するであろう.真菌(かび)は,考慮の中に入れないわけではないが,細菌と一緒に考えてしまっていることが多く,この両者を格別に分けて考える必要はないと考えている人が,まだまだ後を絶たないように思える.確かに,細菌を原因とする感染症に致死率の高い疾患が多いことは事実であるが,臨床家が知る限りの新規にして広領域な抗菌剤を駆使しても患者の生命を救うことができなかった症例の中に,剖検後の病理診断によってその原因が真菌であったことが判明した例がいかに多いことかを考えると,まことに悔やまれてならないのである.現在,真菌の分野に特別の関心を持った研究者や,医療に従事する基礎医学・臨床家の多くは,過去に必ずこうした事例を経験され,真菌の重要性を身をもって受け入れられた方々であろう.
筆者には,微生物の人間生活へのかかわりあい,その多様性は考えれば考えるほど奥行が深く,未知の分野を含めると無限であると思えるのである.
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