Japanese
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綜説
炎症の微小環境メチニコフ説の改訂
The micro-environment of Inflarnmation, Metchnikoff revised
Rene J. Dubos
1
,
田多井 吉之介
1Rockefeller Institute for Medical Research
pp.35-43
発行日 1956年7月15日
Published Date 1956/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201699
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1883年Odessaの医者と自然科学者の仲間を前に行つた「生体の治癒力」と名づける講演で,Metchnikoffは白血球を「敵に突撃する軍隊」にたとえた。かれは「喰細胞」という言葉を創造して,白血球は取込んだ微生物を消化できるとのかれの信念を,(感染に対する防禦力に不可欠であると考える1つの力を)表現した。Metchnikoffはさらに炎症のプロセスに関する個人的な解釈を発展させ,フランス語で1892年に,また英語で1893年に出版されたかれの「炎症の比較病理学に関する講述」で,これを一般的な生物学の学説として表明した。最初の講述の冒頭は生物の組織体の「最も特有な像は攻撃と防禦を行う器官にある」との言葉に始まる。「寄生物は有毒あるいは溶媒物質を分泌して突撃を試み,その宿主の消化および撃退作用を麻痺させて,自らを保護するが,他方宿主は侵略者を破壊し,消化して体外へ排出するし,周囲をとりまく分泌物によつて自らを防護する。」活動性の侵略から感染に至るまでには,ごく短いステツプがあるだけであるとMetchnikoffは信じていたので,炎症性細胞の活動は微生寄生物からからだを保護する目的をもつものと,かれが考えたのも当然であつた。
Metchnikoffは病理学者でも医者でもなかつた。かれが最初に喰細胞説を樹立した時には,高等動物と人間の病理学的プロセスについては殆んど知らなかつたので,すぐに真向から批判の的となつた。
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