特集 水道問題の展望
水道と伝染病
尾崎 嘉篤
1
1厚生省公衆衛生局防疫課
pp.33-40
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201561
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緒言
近時,水道による赤痢その他の伝染病の流行事例が極めて多い。昨年10月,東京で開催された日本公衆衞生学会に於ても,水道による赤痢の爆発流行例が連続して5例も報告せられ,注目を浴びたがいずれもその原因は,水道の運営管理の拙劣さによるものであつた。しかもその運営管理の無茶さ加減は,常識では考えられないようなものが多く,遂に小島衞研副所長が「かかる報告は,公衆衛生以前の問題である。来年からは,本学会ではこうした事例が一つも報告されないよう,至急に事態の改善を望む。若し,同様な報告がなおなされる必要があるならば,それは犯罪学会に於てでもなされたい。」と発言したほどであつた。
伝染病を撲滅すべき使命を担い,現在その普及に多大のエネルギーと資金が充当されている水道によつて,反面,何百人何千人という大量の犠牲者を出しているということは,誠におそるべき皮肉であり,直ちに断乎たる補正手段を講じなければならぬものである。
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