特集 医療制度とその盲点(Ⅱ)
医療費と個人及び国家経済
末高 信
1
1早稻田大学
pp.1-7
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201544
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〔1〕
病気は人間の宿命である。いかに日常健康を自慢にしている人でも,時あつて病気になる。そしてこの病気は,病気として苦痛であるばかりでなく,それは生命に対する脅威である。人間は生物として生命の持続について本能としての執着をもち,従つて生命そのものを脅かすところの病気からはなれ,かつ病気そのものから来る痛みや苦しみから脱がれたいと願うわけである。
このように病気を克服し,その苦痛からのがれるための人間の努力は,広義に解釈された医療である。この医療は,人類発達の初期から,いろいろの形で行われて来たもので,すりむきの疵につばを付けたり,やけどの疵に油を塗つたりしたと同時に,まじないやお祈りなどが行われたことは,改めて説くまでもない。
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