研究報告
疫学上の新課題
古屋 曉一
1
1国立東京第一病院
pp.37-38
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201502
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昭和29年2月8日,惡寒戦慄を伴う高熱を主訴として国立東京第一病院に入院した22才の一女性患者があつた。検査の結果,3日熱マラリア原虫が末梢血中に証明せられ,診断は確定したが,患者は外地及び内地のマラリア浸淫地に居住したことなく,輸血を受けた経験もなかつた。初めての熱発作は今年の1月中旬であつた。陳旧マラリアの再発とは考えられず立ち入つて質問してみたところ,患者は数年前から覚醒アミン(ヒロポン)を常用しており,多いときには1日100本位を皮下若しくわ静脈内に注射したという。患者は入院のときまで上野公園内の某所に居住しており,その週辺には自分と同じような症状を呈する患者がほかに数名いると陳べた。そこで私たち数名のものは,医長の小山(善之)博士を中心として,その実態を探るべく同所に赴いた。そこには日本医大セツルメントがあり,その好意のもとに,その地区の有熱患者,覚醒アミン常用者及び対照としてその地域に,1年以上居住はしているが覚醒アミンを用いていないものたちから血液塗抹及び濃塗標本を作り,併せて簡単な検診を行うことができた。
調査の範囲はその後拡大され,省線秋葉原駅附近,千代田区鍛治橋附近,台東区隅田公園附近,同区田原町附近,文京区後樂園附近にまで及び,調査総数は105例に達した。
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