特集 感染症法の成果と提言
積極的疫学調査の課題
橘 とも子
1
,
小田 宏子
2
,
照井 博之
3
,
桑原 明子
3
,
永見 宏行
4
1世田谷保健所健康推進課
2世田谷保健福祉センター健康づくり課
3世田谷保健所健康推進課
4世田谷保健所
pp.275-277
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100843
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「積極的疫学調査」は,伝染病予防法廃止・感染症予防法成立という感染症予防体系の転換に伴って,法第15条に規定された.「1~4類感染症の患者・疑似疾患者・無症状病原体保有者若しくは新感染症の所見がある者その他の関係者」に対して,都道府県知事などが発生状況・原因などを明らかにする場合に行うことができる.
Surveillance systemの古典的分類における“active surveillance system”の訳語に相当する概念であるが,わが国では感染症法上,発生届けを待つのみではなく,必要な場合には積極的に質問・調査を行うことが可能という新しい考え方である1,2).
公衆衛生学的基本手法である疫学調査を,実際に必要とする多くの場面は,感染症アウトブレイクの発生時であるが,発生直後には原則として病因がわからず,感染症であるか否かも不明な集団発生であることが多い3,4).さらに積極的疫学調査は,現場第一線の保健所が担う機能であると同時に,強化が期待される「健康危機管理」機能を保健所が十分に果たすための大きな拠り所である.そのため積極的疫学調査を広く実地疫学(field epidemiology)の観点から解釈する必要があり5,6),より効果的に実施できる積極的疫学調査の条件を探る目的で,本稿では経験事例から課題を考察する.
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