特集 勞働衞生最近の進歩
放射線障害
高橋 信次
1
1名古屋大学
pp.35-38
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201481
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放射線にはいろいろの種類がある。所謂電磁波と云われているもの,此を波長の長い順に並べると,電波,超短波,赤外線,光線,紫外線,境界線,X線,γ線等になるが,此等はいずれも放射線である。その外に微粒子線と云われるもの即ちラジウム,人工放射性同位元素より発するα線,β線がある。此等は物質自身の構成要素である陰電子,ヘリウムの原子核であつて,原子核内より放出される。更に陽子による陽極線,陰電子による陰極線等も知られている。
此の様に放射線は多岐多様の種類があるが,波長の短かい電磁波や微粒子線が生物に与える作用は本質的には同一と考えてよい。それは此等の放射線が,物質を透過する時はその放射線の一部は必ずその物質により吸収されるのであるが,その時は放射線は電離作用を起こすものである。生体を構成している細胞は主として水から出来ているが,此が放射線を受けるとOH,H,HO2等のイオンになり,此が極めて短時間に再び安定な水に還元する時多量のエネルギーを出す。その際それが細胞の致命的なる個所でエネルギーの転換が起これば細胞は死んだり,或いは病的状態に陥いると説明されているからである。此の様に電離をおこす放射線が生物に対する影響は電離の能力の程度にかかつているのだと云う様に非常に単純化して考える事が出来る。此処には此の様な放射線についてのみ述べる。
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