研究報告
一保菌者から検出された運動性を欠した腸チスス菌の性状に就いて
松井 淸治
1
,
今園 義盛
1
,
小林 文治
1
,
杉山 大是一
2
1東京都立衞生研究所
2市立川崎病院
pp.33-36
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201369
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緒言
運動性を欠くSalmonella菌株所謂"non-motilevariants"に就いては,s. aberdeenにおいてKauffmann(1939)1)が,S. newportにおいてはHinschow2)が,S. SandiagoにおいてEdwards3)(1946)等が,S. paraBでHirsch(1947),S. TyphimurriumでFranees(5等
(5(1952)の報告がある。而して上述の諸菌株は何れも運動を欠くが,鞭毛染色により運動性のある同種菌株と同数の鞭毛を認め又それ等の菌株で生菌免疫血清を作ると鞭毛抗体の出現を証明している。広木等6はS. newingtonに於て同様の現象を観察し発育不全型と記載している。Bahatatnagar(1935)(7等は腸チフス菌保菌者から運動性を欠きvi血清とのみ凝集する菌株を分離して之を "vivariant" として報告している。吾々は昨年6年月市立川崎病院入院の赤痢患者(死亡:sh・flexneri 2aを分離す)家族の検便中たまたまその一員から運動を欠く腸チフス菌を分離した。本人は35年前に腸チフスに罹患したがその後は著患を知らず,今回保菌者として入院中も症状無く経過したが,便からは常に上記の如き菌が検出され又3回採取したA-胆汁,B-胆汁の培養からも毎度菌の検出を見た。吾々は分離菌山本株の性状に就いて保存菌株と比較した成績に就て報告したい。
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