特集 医療制度とその盲点(Ⅰ)
社会保険医療の欠陷
大村 潤四郞
1
1厚生省保險局医療課
pp.6-9
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201508
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立場によつて色々の見方が出来る
我が国社会保険医療における欠陥は何か,これには色々の見方が存するであろう。診療に従事する医師の側に云わせれば,診療報酬があまりに安いために充分な医療が行われ難いとか,そのため医師の生活が安定しないとか,診療方針がきうくつで充分な医療が行われ難いとか,制限診療であるとかいつた類である。患者の側から見れば保険では良い藥を使つてくれぬとか,医師が不親切であるとか,その他色々ある。又保険者の立場に立つて見ると被保険者が制度を濫用するとか,医師が濃厚診療を行うために財政が膨脹して困るとかこの様な点について対策を立てねばならぬという様なことになる。従つてこの様に各自が別な立場に立つて考える時には或立場から欠陥として認められる事項がかえつて長所であり,長所として認められる点が欠陥となる。すべて制度というものはその「しくみ」が合理的であると同時に,それに関係する患者なり医師なりが満足すべきものでなくてはならない。いいかえればその社会には各各社会的な環境条件があつて民衆の習慣に合わない様な制度は,如何にそれが合理的といわれるものであつても,成長するものではない。そこで茲には我が国の医師や一般大衆の現状からして現行の社会医療制度をどの様に改革したらよいと思うかという点について私見を述べて見たいと思う。
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