特集 結核問題の展望
小兒結核
大坪 佑二
1
1世田谷乳児院
pp.17-20
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200729
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I
最近の結核化学療法の著しい進歩によつて小兒結核はその大きな恩惠を受けたと同時に,小兒結核の特徴となつていたことが,少しづつ変りつつある.
小兒結核の特徴は小兒期のそれぞれの時期,乳幼兒期,学童期,思春期によつてちがう.これまでは乳幼兒期においては,発病しやすく,惡化しやすく,経過は早いことが特徴であつた.乳兒においては感染即発病とさえいわれ,それはさらに死を意味することばとして使用されていた.ところが化学療法の出現によつて,発病は防止できないが,惡化は防止できうるようになり,したがつて今までのように急速に経過するものが減少してきた.学童の結核はもともと予後佳良なものが多かつたので化学療法の影響は乳幼兒ほどには著明ではない.しかしこれまで成人に見られるような慢性肺核症は10才以下の学童には,あまり見られなかつたが,そんな病型がぽつぽつ見られるところを見ると,やはり慢性化したのではないかと思われる.思春期の結核は初感染症にひきつづいておこる二次肺結核症が多いが,最近では学童期からのひきつづきの慢性肺結核症がしばしば見られる.これらのことから最近の小兒結核症は全体として経過が長びいて来たのではないか.成人で死亡者が減り,病人が減らないのではないかということと,軋を一にすることである.
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.