特集 精神衞生
時評
反社会性と精神病質
新井 尚賢
1
1東京都立松沢病院
pp.27
発行日 1953年9月15日
Published Date 1953/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201263
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精神病質とは異常人格であつて,その異常のために社会が悩まされるか,あるいは自分自身が悩むものである。したがつて,社会的危険性の多い場合は主として前者である。精神病質は疾病でなく持続的な人格の状態である。
このような反社会的な人格が遺伝的なものであるかどうかは,1卵性および2卵性双生児の例について詳細な比較研究が行われ,前者であることを肯定する豊富な資料が得られた(Lange,Stumpfl,吉益等)。したがつて,遺伝素質と密接な関係があると考えられている。一方歴史的にみると極端な素質説として,生来性狂罪者Delinquente natoの説があつた(Lombroso 1876)。すなわち,全犯罪者の3分の1を占める,いわゆる生来性犯罪者なるものがあり,かれらは,一定の身体的および精神的表徴を有する特有な人類学的類型であるというが,このような,環境に全く無関係な宿命的必然性を以て,犯罪者となるというようなことは到底,考えられない。
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