論説
季節馴化の一考察
倉田 正一
1
1慶大醫學部衞生學公衆衞生學教室
pp.3-7
発行日 1952年7月15日
Published Date 1952/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201063
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季節に對する人體の馴化能は從來,いろいろの點から觀察されている。季節の主として温熱條件の變動に對する生理的反應をみると,變動にただちに應ずる反應群と,多少とも時間的なヅレをもつ反應群と,ほとんど變動に無關心であるような群とにわけられる。物理的體熱放散の關係因子である皮膚温,血液水分,發汗などは外部環境の變化にただちに應ずる群に屬していて,季節特有な變化はみられないと考えられる1)2)。
ところで,同じく物理的温熱放散の關係因子である皮膚不感蒸泄水分量は季節に對してどんな態度を示すであろうか。季節を追つて,身體露出部の手背皮膚面について蒸泄水分量を測定してみると,少くとも季節の温熱條件の變動に對して從屬的ではない,極言すれば濫熱條件とは無關係な態度をとることがわかつたのである3)。そこで,この現象が果して,一年を通じてほぼ温熱條件が恒常である衣服下の胸部皮膚面でみられるがどうかを追求したところ,各季節を通じて温熱條件がほぼ恒常であるにも拘らず,手背皮膚面と同樣に蒸泄水分量は季節固有な態度を示すことをしつた4)ここで,少しく本現象を検討してみようと思う。
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