論説
赤痢豫防はこれでよいか
松田 心一
1
1國立公衆衞生院疫學部
pp.2
発行日 1952年7月15日
Published Date 1952/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201062
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最近の赤痢の侵攻振りは,敵ながらなかなか天晴である。これでもか,これでもかという風な攻め方である。流石の味方陣營も,なにくそと力んでは見るものの,ここのところ原爆に匹敵するような反攻のいいきめ手もなく,多少僻易の形である。
ところで,赤痢側からの功め方には別段新戰法がある譯ではない。千年一日のように,定石どおりの地味な戰法で,執拗に我々を攻撃して來る。我々は敵の攻撃力(赤痢菌の特性)も,攻撃據點(傳染源)も,侵攻路(傳染經路)も,すべてこれを知悉している。我々はそれに從つて自陣の護りを固くし,その虚を衝いてこれを反撃しようと試みる。つまり我々の反攻戰術も定石どおりに進められ,倦まずに續けられさえすれば,彼等の侵攻を阻止することは決して難しいことでは無い筈である。だから我々は,その定石に從つて,凡そ用い得る一切の防遏手段を講じて,彼等の攻勢を食い止めるのに眞劔である。それにもかかわらず,赤痢の侵攻は駸々として停止するところを知らない。これは一體,どうした事であろうか。
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