醫藥隨想
公衆衞生の實未だしか/研究の樂しみ
土屋 忠良
1
1京都府衞生部
pp.42-43
発行日 1951年7月15日
Published Date 1951/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200883
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由來,我が國に在りては,夏になると,蚊や蠅が出てくるものだ。蚤や風が居らなきや夏じやない……と,さもこうしたものの居るのが當然のことのように考えられる者の未だ餘りにも多くあることは否めない事實である。
それかあらぬか,終戰間もないある晩春の頃に,DDTを室から飛行機で撒布されてビツクリしたり,大きな噴霧器で,ケロシンをドブやセギにプープー吹きかけられて,成る程なあと感心させられたり,戰爭中各家庭に備えつけさせられた貯水槽には土を入れ,野菜を栽培せよ竹の切り株や墓石の花立に水を溜めておくとボーフラが發生するから直に砂をつめよと教えられ,お蔭で此の夏は蚊帳もつらずに相すんだ。風や蚤にも咬まれずに樂をしたと大喜をした吾々であつたが,咽喉もとすぎれば熱さを忘れるの醫にもれず,昨今では,何うやら衞生當局者の鼠族昆虫驅除方策の掛け聲をも,うわの室で聞き流して居られる方々が相當に殖えたらしい傾向にあることは,昨今の實情が雄辯に之を物語つている。
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