グラビヤ解説
模範的な堆肥小屋/屎尿分離處理
水島 治夫
1
1九大
pp.43
発行日 1951年7月15日
Published Date 1951/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200884
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宮崎市南方地方では,各農家が圖のような立派な堆肥小屋を持つている。`たいてい間口3間,奥行2間,間口の中央に入口があり,地上約1.5mは石壁,その上は板壁。堆肥,藁,雜草などを30cm位の厚さに積み,その上に屎尿をふりまき,さらに堆肥,藁などを積み重ね,屎尿をふりまく。かくて層々積み重ね1.5m位にする。すると間もなく盛んに醗酵が起り,數日目には内部の温度が60-70-80℃に上る。2週間もすると容積は小さくなる。そのころ切り返し,内外上下をよく混じ,風呂水,數所水などをかけて高温による乾燥を防ぐ。數ヵ月間に數回切り返しを行うと,藁や草の原形は止めぬボロボロの土のようになる。これを肥料として用いる。蛔虫卵の如きも醗酵による高温のため完全に殺されてしまうチフス菌や赤痢菌の如きは,絶滅されること疑いない。この村の農家は,自家農家の糞便は全部堆肥に混じ,糞便そのものを肥料として用いない。そのため蛔虫の寄生率は全村で20%に過ぎぬ。この20%の寄生者は,主として農家や引揚者などで堆肥小屋がなく,糞便をそのまゝ肥料とするものである。便所が滿ちると,糞便を」こやし溜め」に貯えておいて,堆肥を作る時まぜるから,それまでの間,ハイなどによる危險は免れない。
日本の全農家が,糞便をこのようにして堆肥に混じて肥料とすることにし,糞便をそのまゝ肥料とすることを止めれば,蛔虫撲滅は大いに達成されるだろうと思う。
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