--------------------
衞生害蟲の季節的消長
加納 六郞
1,2
,
佐藤 孝慈
1,2
,
佐々 學
1,2
1傳染病研究所
2衞生動物研究室
pp.81-83
発行日 1950年8月15日
Published Date 1950/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200695
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.蚊の季節的消長
農業害虫の季節的消長が古くから盛んに觀察考究され,進んで發生豫察,それに基づく防除對策を行うに到つているのに比べると,衞生害虫に於ける此の方面の研究は確かに遲れている。之は單に季節的消長ばかりでなく衞生昆虫學そのものが最近まで殆ど顧られなかつたことに原因している。しかしこれらの研究が全く無い譯ではなく,小泉,山田,細井,野村等によつて蚊の季節的消長が報告され,又最近は岡山で佐々,京都でラカース,山口,東京で佐々,加納,林ら及び北岡,三浦らが之等の問題を取り上げている。或る地方で1つの昆虫の季節的消長を知る爲には,種々の觀察方法が考えられるが,どの手段も1長1短で眞の消長を知ることは仲々困難である。蚊についてみるならば,動物嗜引法によると蚊の動物嗜好性が問題となり,電燈誘引法では走光性に左右され,厩舎,家屋内或いは野外で捕虫網や吸虫管を用いて捕る法は採集者の技能や作業時間により著しい違いが現れる。又幼虫を調査する方法もあるが,之も發生場所の發見,幼虫の捕獲は調査者の知識,技能により異る。此の樣に眞の消長を知ることは仲々困難であり,之等を綜合して考察しなければならない。しかし衞生昆虫學の立場から言うならば,蚊の季節的消長が疫學的に如何なる意味をもつかということが重大である。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.