特集 保健所
大學の教育と公衆衞生
吉川 春壽
1
1東京大學生化學教室
pp.128-130
発行日 1950年3月15日
Published Date 1950/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200591
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醫科を卒業した學生はインターンのあいだのある期間保健所に行つて公衆衞生の實際を習得することになつている。個々の患者の診療をする治療醫學だけではもはや不十分で,將來の醫學は公衆衞生の方向へ發展して行かなければならないということは多くの人の一致してみとめているところであるが,その公衆衞生に關する,このような教育方法がどれだけの效果をあげ得るだろうかということを考えるとどうも疑問に思われる。
保健所に行つて來たインターンの意見を2,3きいて見ると,いろいろの不滿を述べるが,一つには保健所の職員の數が手薄なこと,あるひは職員のレベルが十分ではない等のために思うような指導がうけられないということ,また,一つには保健所管下の大衆公衆衞生に對する認識が乏しいために,實情を十分に調査し得ないというのが主な點のようである。要するに保健所を通じて體驗した公衆衞生といふものがインターンの興味を惹かないといふことは事實らしい。私はさういう學生に對しては,現在の公衆衞生行政がいかにまだ弱體なものであるかを直接知り得たことがすでに大きな收穫なのであつて,將來それをどうしてもりたててゆくかという問題こそ諸君がたとえ診療專門の醫師になろうともいつも心得てゐなければならないのだと云つている。
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