論説
公衆衞生學の一つの行き方
吉川 春壽
1
1東大醫學部生化學教室
pp.223-225
発行日 1948年3月25日
Published Date 1948/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200264
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公衆衞生には,調査をしてその結果を統計學的にまとめあげるという仕事が,非常に大切なこととされてゐる。わたくしたちは,これによつて現状を正しくつかみ,その事實にもとづいて有效適切な對策を講ずることが出來るのである。このようなわけで,正しい調査は公衆衛生にとつて第一段階なのである。この第一段階を踏みあやまるか,あるいはいゝ加減にごま化しておくと,それからとんでもない結論が出てしまつて,對策のたてようもなくなる。現實をまちがいなく把握するということは,何も公衆衞生に限つたことではなく,あらゆる學問に共通な根本的の要點であるが,公衆衛生ではその結果でひろく一般公衆の健康ということに直接ひびいて來るのだから,實際上の問題としてますます念を入れなければならないところである。
調査にはいろいろの方法があろうが,一番大切なのは計測ということであろう。體重,身長のようにきはめて簡単にはかれるものから,上下水の細菌學的・化學的の檢査とか,呼吸ガスの分析とかのように相當進んだ技術を要するものまで,公衆衛生擔當者のしなければならない計測の種類はなかなか多い。ことに調査對象が大規模となることが多いので,多數の計測を比較的短い期間にすませてしまはなければならないという制約があつて,いろいろと苦心せねばならない。
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