研究と資料
幼虫採集法によるシナハマダラカの發生量調査について
細井 輝彦
1
1東京都衞生局防疫課
pp.409-412
発行日 1949年5月25日
Published Date 1949/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200467
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ある地域内の蚊族發生量を計測する場合に,幼蟲を對象とすべきか,または成蟲によるべきかは,調査の目的,條件,或いは蚊の種類によつても,それぞれ得失があろう。本邦の代表的なマラリア傅播蚊であるシナハマダラカ(Anopheles hyrcanus sinensis)の發生状況調査方法論については,すでに野村健一(1943,47)が詳細に報告している。水田や沼澤地帶では,この蚊の發生水域が非常に廣汎なため,こういう地域における幼蟲發生量を具體的に表示するには,どうしても比較的少數の代表的な水域調査結果から,全體を推定しなければならない。では,どのような水域をどのくらい調査したなら,その地域全體の幼蟲發生量について,どの程度の判斷を下すことができるだろうか。以下この問題に關する一つの調査資料を報告したいと思う。
調査のため特に選んだ場所は,東京都江戸川區の中央部で,東西1.5Km,南北2.5Km,水田を主とする村落および小市街地である。江戸川區のシナハマダラカ發生状況については,すでに本誌4巻2號に報告してあり,また都内の他地區との比較も別稿にゆずるが,2年間にわたる延べ3,000箇所に近い水域調査の結果からみて,東京ではこの蚊の幼蟲出現量が7月を頂點とすることは確實である。越冬成蟲の産卵にもとずく前驅發生は4月に見られ,これが羽化する5月には一時幼蟲が減少し,6月から本格的な發生が始つて10月まで績く。
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