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尋常性毛瘡の成因に關する一考察
安田 利顯
1
,
高野 三郎
1
1都立駒込病院皮膚科泌尿器科
pp.432-435
発行日 1949年10月1日
Published Date 1949/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200256
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膿皮症の發生には病原菌のみならず,皮膚の生物學的性状が重要な意義をもつことは容易に推定出來る。著者の一人高野は第290回東京地方會に於て,本邦では最近川村助教授が問題とされている所謂小痂皮性膿痂疹(klein-krustige Impetigo)に於て皮膚毛細血管抵抗値が正常値範圍の下閾,或は正常値以下にあることを指摘し,之がこの症型發現の原因をなすならんと述べ,尚又本症の治,療は抗菌的療法のみでは不充分で,屡々ビタミンB2劑の併用が著効を奏するものゝあることを述べた。一方既に皮膚に於ける水分蓄積,榮養失調糖代謝異常,性ホルモン,殊に女性ホルモンの減少等が細菌感染を助長することが知られてをり,斯くて膿皮症に於ては個體の生物學的性状の檢索をゆるがせにすることは出來ぬ。
尋常性毛瘡の原因菌,臨床像等に就ては今日諸家の意見が略々一致しているが,その病理及生成因子に關しては尚多くの疑問が殘されている。本症が葡萄状球菌,稀に連鎖状球菌の感染により發生するとしても,その慢性で頑固な經過を取る理由は如何?。これには葡萄状球菌の毒力の特殊性よりも,寧ろ個體の生物學的素因を考えるのが妥當ではあるまいか。著者等は最近4例の尋常性毛瘡に於て血中焦性葡萄酸値の上昇を認め,ビタミンB2と葡萄状及び連鎖状球菌トキソイドとを併用,治効を擧げ得,且つ文献を檢討してビタミン缺乏症と本症との關係を肯定した。以下その大要を記して諸賢の批判を乞う次第である。
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