論説
水の衞生
pp.149-150
発行日 1948年7月25日
Published Date 1948/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200315
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水は生理的機能を營むに必須な要素であつて,人生最要の生活必需品である。從つて飮料水の安全を確保することは文化國家の公衆衞生事業の第一要務と云ふべきである。然るに從來我國に於ては遺憾ながらこの第一義的公衆衞生事業の重要性が認識されず,そのためにこれを擔當すべき衞生行政組織は甚だ不備であつた。それ故に敗戰以來占領軍當局から其の整備を促がされて居つたのであった。幸に先般來厚生省に之を專管する施設課が設けられ次いで其名も水道課と改められ,地方廳には擔當専門技術者が置かれ,更らに保健所にも衞生監視員が配置されて第一線の指導監督に當ることゝなつた。これは我國の保健衞生の發達史と正に劃時代的の出來事であるが,願くは新任職員各位の精進によつて新機構の成果が十二分に發揚されることが要望される次第である。
水による危害には第一に酸性水道水による鉛中毒の集團發生,迷入した毒物に井戸水による中毒などのやうな異常化學成分によるものもある。又飮料水中のヨードの不足による甲状腺腫弗素の不足による齲蝕の集團發生(本號美濃口氏論文參照)などのやうな一定化學成分の不足による危害例もあつて,米國ではこのやうな場合水道水に適量のヨード或は弗化ソーダを加へたり,或は又ヨード加食鹽,弗化ソーダ加清涼飮料水を販布するなど既にその對策が講ぜられて居る。
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