論説
公衆衞生と榮養の問題
有本 邦太郞
pp.80-82
発行日 1948年6月25日
Published Date 1948/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200303
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疾病の豫防,健康の保持にはこれが原因となる外的條件を芟除せねばならぬことはいうまでもないが,同時にこれが内的條件をもととのえねばならぬ即ち疾病に對する身體抵抗力を培養し,これに抗することが必要である。公衆衞生における榮養の地位は主としてここに存するのであつて,從來ともすればこの認識が一般に稀薄のように思われる。われわれは單に生命を保ち疾病におかされないからといつてそれで眞の健康がえられたと解してはならない更に加うるに旺盛な活動力によつて勤勞が營まれ生活の目的が達成されねばならぬ。そして,これが獲得には鍛練等も一つの必須要求ではあるが,更に重要なのは適正な榮養の補給である。活動に十分なエネルギーが供給されてもそれが食物として榮養の適正を缺いた場合には身體機能が十分にそのエネルギー効果を發現せしめえないから從て十分な勤勞が營まれない。
前段にものべたように榮養は公衆衞生の一環として疾病の脅威から身體の安全をまもるばかりでなく更に高度の健康を持し,進んでは體質の改疇を目指すものであるから,いつの世いかなる國においても重要であるが,特に榮養資材である食糧に不足する時期または場所にあつてはその重要性を増すものである。
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