特集 榮養
論述
榮養と公衆衞生
齋藤 潔
1
1公衆衞生院
pp.63-65
発行日 1950年2月15日
Published Date 1950/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200575
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自然界から生産されるそのまゝの食糧が,人口に比較して豊富であつて,人々は欲するまゝに食欲を充たしていた時代から,食物は生理的の必要量を攝るように考え始めた。今日までのわれらの食生活には,さまざまの變遷を經て來た。
最近數10年間の榮養學の著しい進歩は,榮養素の質と量からくる諸種の疾病を教えて食生活の改善を促がし,更に食は單に特殊の疾病を豫防するばかりでなく,進んで一般の疾病豫防の根抵となり,活力を養い,仕事の能率を高め,生命さえも延長する要素であることが明かになつた。然るにこゝに不思議な理象は,"食糧は足り民衆はうえる"ことがありうる。食の問題が單に量だけで解決し得ないのと,今日の食の問題が1國1民族の間だけで解決されるものでなく,國際間の問題であることと,食糧の解決が經濟と緊密に關聯しているからである。換言すれば,食の問題は生理的のものであるが,これが所期の目的を達するためには,經濟,農業,畜産業,水産業,工業との關聯に於て考慮さるべき性質のものであることを物語るものである。
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