紹介
タール剤は発癌物質を含まぬか,他
pp.963
発行日 1961年11月1日
Published Date 1961/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203172
- 有料閲覧
- 文献概要
粗製タール,イクタモール(イヒチオール),コールタール溶液などタール剤を長期に亘つて皮膚の局所に外用することは,全く理論的にいえば,皮膚癌を発生する可能性がある。しかし,かかる治療を受けた無数の患者のうち,局所治療後に癌発生を見た稀な症例において両者の因果関係は証明されていない。かかる患者におけるタール療法は,癌発生と暗合したもので,後者を惹起したのではないと考えられる。癌が古い乾癬巣に生ずることがあるが,これは自然発生あるいは砒素剤投与のいずれかによると信ぜられている。タール治療によつて癌が発生しないこと,更に紫外線療法を合併しても然ることの理由は明らかではない。しかし発癌物質の作用を抑制する2つの重要な因子がある。第1に治療に用いるタールは1%乃至10%で,これは工員などの触れる濃度に比して遙かに低い。第2に薬剤としてのタールは比較的低温度,通例50℃で蒸溜されるが,工業用のタールは高温度で分溜される。タール治療後に患者の発生を見ないにしても,慢性皮膚疾患に対しタールとの接触を長期に亘らせることは注意を要する。(Davis,J.:J.A.M.A.176,751,1961)
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.